皆さんこんにちは
外来で診療をしていると、ときどきこんな患者さんに出会います。「体の調子が悪くて病院にいったのだけれど、いくら検査をしても何も異常が見つからず、どこも悪くないと言われる。どうしたらいいでしょうか?」こういう場合には【心身症】と呼ばれる病気の可能性があります。
心身症とは、心理的・社会的なストレスによって、体の症状が引き起こされている病態のことです。人間の心を体は密接に関わっており、互いに影響を及ぼし合っています。
人間は新しい環境でストレスを受けても、柔軟に対応して少しずつ適応していきますが、ストレスがあまりに強いと適応することができず、心身に大きな負担がかかり、さまざまな体の不調が現れます。
学校に行くことを負担に感じている子どもが、登校時間になると、腹痛、頭痛、下痢などを訴えたり、パワハラを受けている会社員が、苦手な上司のいる職場にいくとめまい、頭痛、体のふるえが現れたりするのはその例です。
私たちの心の状態は、健康にも深く関わっています。家族との死別や離婚などにによって強いストレスがかかっている時には、免疫力が落ち、がんや関節リウマチなどの大きな病気にかかりやすくなります。医師の診察を受ける際にも、医師とよい信頼関係を築き、診療に満足している患者さんは、そうでない場合に比べ、たとえ同じ薬をもらっていても、薬がよりよく効き、治療の効果も上がりやすいことが知られています。
人間は心を持った存在であり、人間が体の不調を訴える背景には、体の病気の他にも、心の葛藤、家族との関係、職場での立場など、さまざまな心理・社会的な要素が関係している場合があることを理解しておくことは、とても大事なことです。